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 国東’&ギャラリー常設展第1期 赤木範陸「20世紀の錬金術師」~1990~2000年10年の軌跡

場所:ギャラリーアトリエアルテ [大分] 会期:2021.08.08 - 2021.09.20

2021年 9月20日(月)に終了いたしました。
<展示作家プロフィール>
赤木範陸(あかぎ のりみち)1961 大分県生まれ 1988 東京藝術大学美術部油画科卒業。同大学院油画技法材料研究室に入学。 大学院在籍中にミュンヘン国立藝術大学に合格。1990 東京藝術大学大学院博士前期課程技法材料研究室修了。89年より在籍していたミュンヘン国立藝術大学教会藝術研究室に於ける研究のため渡独。翌年DAAD (ドイツ学術交流会)により国費留学生として給費を受ける。
1995 ミュンヘン国立藝術大学教会藝術研究室満期修了ディプロム修士取得 (DiplomMA)。マイスターシューラー(Meisterschuler)の称号授与。現在横浜市在住。横浜国立大学大学院教授。
 
 今回、20世紀の錬金術師と題し、若き日の画家の初期作品を中心に、ドイツ帰国後から10年の歩みを第1期としてご覧いただこうと思います。私自身、この時期の作品は印象深く記憶に残る作品が多くあります。古典技法を中心とした作品の中でも、「分散する情景」1988年/ワックステンペラ、板に金伯 /44.5 ×39.6㎝は、初期の作風となります。現在の作風と比較しても支持体や扱う溶剤も違います。現在では、簡単に述べるなら、生キャンバス(麻布)に水溶性のエマルジョン(乳化)した蝋の浸潤を利用して描きだすのに対して、初期の多くは、板そのものにテンペラで描いた作品や白亜地の下地を施した板に油彩又はテンペラで描く代表的な古典の手法が中心となっています。
初期作品も、現在の作品もWaxを使用する技法「蝋画」という点においては同様といえるものの、その扱い方、表現方法、処方箋は、全く違ったものとなっています。
とはいえ、今日の作品における原点ともいえるこの「分散する情景」のように当時のWaxテンペラの手法で描かれたものは、赤木範陸絵画を語る上で大変貴重な作品と言えます。ただ、そうした経緯をひとまず置いてみても、画家の作品そのものの素晴らしさと、不思議な世界観とその独自性は特別なものを感じます。
 どの作品も素晴らしいが、先に紹介したこの作品の前に立ったらぜひ、少しだけ顔を近づいてみるといい。目の前にある描画の地肌は、通常のワニスによるものとは違って、それは美しい大理石の模様のようでもあり、平滑に磨き上げられ、どこか冷たささえ感じさせる不思議な輝きに気が付くでしょう。確かにそこに描かれてはいるが、顔料というものをまるで感じさせず、絵の具というものの存在さえなくしたかのように思える。このマチエル(地肌、質感の意)から伝わってくる不思議さは、内側からくる輝きのせいだろうか、それとも金地の背景と合わせてどこか宇宙的な浮遊感のせいだろうか、あるいは呪術性。いずれにせよ、気にしなければすぐさま通り過ぎてしまうかもしれないそれら小さな作品のささやきをどうぞ聞き逃さぬよう願います。それは夏の夜の草陰に息をひそめる鈴虫のような慎重さでご覧ください。そして、やがて奏で始める美しい音色に耳を澄ませた後、深い深呼吸のような心地でこの絵画空間をお楽しみいただければ幸いです。


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